初個展を終えて




初個展が終わった。写真を始めた頃からいつかは個展をと考えていたが、その時は思っていたより早かった。いや、正確には周りの力で早められたというほうが正しい。今回の個展は自分一人では決して出来なかったし、正直、まだまだ個展なんてできるレベルでは…という思いもある。しかし、それでも今回やってみたことでいろいろなことが見えてきたし、当初、考えていたよりも自身へのインパクトは大きかった。


自分の写真を突き放し、客観的に見ること。壁に飾られた写真と何度も何度も向き合って、改めて自分が撮り続けているものを見直したし、被写体の持つ意味なんかも考えていた。写真はいつも、何も考えることなくさっさと撮っているが、それらを今回のテーマに合わせて選び出す。選び出したものを時間をおいて見直し、さらに選び直す。その作業を何度か繰り返し、ようやく個展に出してもよいと思えるものを選び出せた。


選び出されたものを組み合わせてじっくりと見ていると、いろいろな意味が浮かび上がりおもしろい。東松照明が語ったという「写真は選択の芸術」という言葉が、妙に実感として感じられた。選択はほとんどが直感によるものだったが、それ以上に、写真が語る声に合わせていったというほうが大きかった。自分の好みという誘惑に何度も引っかかったが、あるテーマで他者に見せるということを考えると、そんなちっぽけな感情は捨て去る必要がある、ということもよくわかった。


自分の写真を他人がしげしげと眺めている様子を間近で見るのは今回が初めてだったが、なんとも恥ずかしい気持ちになった。概ね好意的に受け入れてもらえたようで、ほっとしたのと、自分が撮っている写真をわかってくれる人がいてくれたというのがとにかくうれしかった。中には辛辣な意見をいう人もいたが、それはそれで参考になった。あの人が普通ではない言っていたことが、自分にとってはごく当たり前のことで。もしかしたら、自分では当たり前なことが、世の中的にはそうではなかったりして。生の反応を得るということは、とても貴重な体験となった。


軽い気持ちで始めた写真だったが、よくここまで続いたものだ。これでようやく写真の世界の入口に立てたのだと思うが、この先どうしていこうか考えると途方も無い。道がなければ作ればいいだけで、自分は自分の思うとおりにやっていこうと思う。