写真と光




朝の通勤途中、ふと前方に目をやると辺りの風景、ビルの壁面がきれいに輝いて見える。
初夏のよく晴れた日で陽の光はまだやわらかく、透き通った黄金色をしている。
思わずはっとした。ここは大阪のど真ん中で、あたりはまったくのビル街。
どうしてこんなビル街の景色に心動かされたのか、不思議でしょうがない。
どうかしてしまったのかと思ったが、何度見てもやはり美しい光景だと感じる。
手元にカメラが無いのが残念でならなかった。
こんなときはいつも「肉眼レフ」があればいいのに、と思ってしまう。


これまで何度となく一瞬の光に心奪われることがあり、
もちろんカメラがあるときはその光景を撮るのだが、うまく撮れた試しがない。
後で撮れた写真を見てみると、決まってがっかりしてしまう。ああ、こんなはずじゃなかったと…


二ヶ月ぶりの写真学校。この日は、芸術家でありながら現役のお坊さんが講師。
坊さんとはいえ、丸坊主ではないから外見は普通のおっちゃん。
何度かこの坊さんの話は聞いているが、今回もやはり雑談混じりで話は右往左往した。
そんな中、印象に残ったのが光の話。
同じような内容を前回も聞いているのだが、今回はまた少し違った受け止め方をした。


工場勤めをしている人が、この坊さんにこんな話しをしたのだという。
「工場に差し込む夕日の光が設備に当たって、そりゃあ、もうきれいで…」
また、別の人が坊さんに言うには、
「冬の寒い朝、あの銀行の前に行ってみ。あの時間の光がすんごいきれいでな…」
その場のイメージがはっきりと頭に浮かんだ。
少し前に同じような体験をしたから、より印象に残る話になった。


写真と光は切っても切れない縁。写真をやる限り、光を追い続けることになる。
目で見た光を、感じたままの光を、封じ込めたいと思うが、きっとそれはできないことなんだろうな。